2018年 04月 10日 ( 1 )

『日の名残り』1993年 イギリス映画

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去年、ノーベル賞文学賞を受賞した作家カズオ・イシグロ氏の小説「日の名残り」を原作とした映画です。

実は、カズオ・イシグロ原作本ということ以外の予備知識ゼロで見たのですが、
観終わった後の気持ちは、とても複雑でした。

と言っても、そこに悪い意味は含みません。

結論から言えば、とても感動したし、とても好きな映画となりました。

観終わった後に、ジワジワと感動が静かに押し寄せてきて、
それは時間が経つにつれて大きくなるほどでした。

複雑な気持ちになったのは、この映画から伝わってくるものが、あまりにも繊細で切なくて、
それを言葉で表現するのがおこがましいような気持ちになり、
どうやってこの映画への想いを整理したらいいのだろう...と戸惑ったからだと思います。

第一次世界大戦後のイギリスを背景に、
イギリス政界の名士ダーリントン卿に忠実に仕える執事スティーブンスをアンソニー・ホプキンスが、
そして彼の下で働く女中頭ミス‥ケントンをエマ・トンプソンが演じています。

人は誰でも「公の場での自分」と「プライベートの自分」を持っていて、
それを TPO に合わせて使い分けていると思いますが、
スティーブンスにはそれがうまく機能していないようです。

どんな場面でも決して「私」「個」としての自分の気持ちを口にしない、人に見せない。

愛しい気持ちを抱く女性に対しても、そこは頑なです。

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それがスティーブンスが言うところの「一流の執事」ということなのかもしれませんが...

でもね、切なすぎる、そんな、そこまで自分を抑え込まなくても...と胸が痛くなります。

「一流の執事」「執事としての品格」にこだわるスティーブンスの人生観、生き様が
アンソニー・ホプキンスの繊細で丁寧な演技によって立体的に伝わってきて、
大変味わい深い作品になっています。

観終わってからすぐに原作本を読みました。

独特の世界観にあふれるこの本を、
上映時間 2 時間強という制限の中で可能な限りほぼ忠実に映像化していることが改めてわかりました。

あとね、翻訳が素晴らしい!

実は先日、一時帰国した息子に頼んで英語版も買ってきてもらったのですが
この英語をあんなに美しい日本語に生まれ変わらせた翻訳者の土屋政雄さんの手腕は
本当に素晴らしいです!

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「執事」という職業は英国にしかない。

これは原作にも書かれている一文ですが、この映画もそれを十分に伝えていると感じました。

スティーブンスが生きた時代の特殊性 - 第一次世界大戦後のヨーロッパ各国の在り方、ナチスドイツ台頭への対応などが背景として描かれているので、
その部分も「なるほど~、そういう動きがあったのか...」と、勉強になります。

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現在公開中の映画『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男」も先日観ましたが、
内容がリンクしている部分もあるので、そこも興味深いところです。

若い頃のヒュー・グラントやクリストファー・リーヴもいいシーンを作っています。

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特に、後半でスティーブンスに「執事」としてではなく、「人間」としてどうなのだ?
と詰め寄るヒュー様とのシーンは、静かながらも緊迫感があり、見応えがあります。

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そして、物語の後半でこのタイトルの意味がジワジワと染み入ってきて
何とも切なくなります。154.png

バス停でのスティーブンスとミス・ケントンのシーンは切なくて美しい。

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観るたびに味わい深くなって、ジュワ~っと心に入ってくる名作です。

カズオ・イシグロ文学は「わたしを離さないで」も読みましたが、
彼の作品には根底に人を優しく見つめる空気が流れていますね。

テーマは重いけど、それが読み終わった後の心地よさになるのかな...。

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